2017年10月14日(土)の記紀歌謡万葉集研究会の報告 

 
◆第 14回 記紀歌謡万葉集研究会 
平成29年10月14日(土)13:00~15:00  久松町区民館 
 座長 橋本正浩
 出席者 (10名前後、要確認) 
 


1.応神帝の皇太子に髪長比売を給う時の詩の続きで古事記第四十六番から取り組んだ。

①古事記第四十六番、日本書紀の第三十五番を担当者は対比しながら、ほぼ従来説に近
い説明をした。  ・古事記第四十六番
  従来読み:道の後(しり) 古波陀嬢子(こはだをとめ)を 雷(かみ)の如(ごと)
       聞こえしかども 相(あひ)枕(まくら)枕(ま)く

 橋本氏の読みと解説、解釈
 読み:道の尻 コハダ乙女を 上(かみ)の如(ごと) 聞こえしかども
      相(あひ)枕枕く(まくらまく)
   解説:カミノゴト:カミ(上)は目上の人。この場合は父の想い人。
解釈:(日向の様な)遠いところにいた コハダ乙女は 父の想い人と
      聞いていたのに (その人と今)枕を共にできたなんて(夢のようです)


・続いて、日本書紀第三十五番
  従来読み:道の後 古波儴嬢女(こはだをとめ)を 神の如 聞こえしかど
     相枕まく

橋本氏の読みと解説、解釈
読み:道の尻 乞はな乙女を 上の如(ごと) 聞こえしかど 相枕(あいまく
    ら) まく    解説:コハナヲトメ:コフ(乞ふ・四段活用)の未然形+ナ(願望の助動詞)から欲       しいなと思っていた乙女。  解釈:遠くの方から来た 欲しいなア と思っていた乙女は 父の想い人だと聞いてい
    たのに (その人と)枕を共にできたなんて(夢のようです)  ②次に古事記四十七番と日本書紀三十六番を比較しがら検討した。担当者はほぼ従来説と同
  じ説明をした。

・古事記第四十七番
 従来読み:道の後 古波陀嬢子は 争はず 寝(ね)しくをしぞも
      愛(うるは)しみ思ふ

橋本氏の読みと解説、解釈。
 読み:道の尻 コハダ乙女は 争はず 根敷く鴛鴦(をし)ぞも
    麗(うるは)しみ思ふ
 解説:アラソハズは張り合わない、争わない、で、この場合「素直な」とする。
    ヲシは鴛鴦(オシドリ)、 ゾモは~であるのかなア
 解釈:遠いところから来た コハダ乙女は 素直な娘で 間違いなく(二人は)
    鴛鴦夫婦なのかなア 素敵な人だと思っています。

・これに対し、日本書紀第三十六番は、
 従来読み:道の後 古波儴嬢女(こはだをとめ) 争(あらそ)はず
      寝(ね)しくをしぞ 愛(うるは)しみ思(も)ふ

 橋本氏の読みと解説、解釈。
読み:道の尻 乞はな乙女は 争はず 根敷(ねし)く鴛鴦(をし)ぞ
   麗(うるは)しみ思(も)ふ
解釈:遠くの方から来た 欲しいなア と想っていた乙女は 素直な人で
   間違いなく 鴛鴦(夫婦の様)ですよ 素敵な人だと思います

③次は、古事記第四十八「吉野の国主の奏歌」に入った。
・古事記第四十八番
 従来読み:品陀(ほむた)の 日の御子 大雀(おほさざぎ) 大雀 佩かせる大刀
     本つるぎ 末(すえ)ふゆ 冬木如(の)す からが下樹(したき)の
     さやさや

  橋本氏の読みと解説、解釈
 読み:鞆(ほむた)の 日の皇子 おほ分明(さやき)  おほ分明 佩かせる大刀   本劒(もとつるぎ) 末振(すえふ)ゆ 冬木為(の)す 幹(から)が下木の  清々(さやさや)
 解説: モトツルギ、は本来の剣から、由緒ある剣、立派な剣、の意か。
  カラ(幹)の下に生えている木とは、偉大な応神帝の皇子という意味か。
解釈:ホムタの 日御子は オホサヤキ(とても明快) オホサヤキ
   お佩きになっている太刀は 立派な太刀で 下の方(の飾り)が 揺れています
   冬の木のように 幹の下に生えている木が サヤサヤ(すがすがしい)

・次に古事記第四十九番に入った。担当者の説明後、「横臼」についての議論があった。
従来読み:白檮(かし)の上(ふ)に 横臼(よくす)を作り 横臼に
     醸(か)みし大御酒 うまらに 聞こしもち食(を)せ まろが父(ち)

   橋本氏の読みと解説、解釈
読み:樫の賦(ふ)に 横臼(よくす)を作り 横臼に 醸(か)みし大御酒
   旨(うま)らに 聞こし持ち食(を)せ 我(まろ)が父(ち)
解説:カシノフのフは賦(税・貢物)。
マロガチはマロガ(我が)チ(父)、でこの場合「お館様」。
解釈:樫の木の貢物として(樫で)横臼を作りました 其の横臼で 醸した大御酒は
   (とても)おいしですよ どんどんお飲みくださいな お館様

・上記、古事記第四十九番と比較しながら日本書紀第三十七番に入った。
 従来読み:橿(かし)の生(ふ)に 横臼(よくす)を作り 横臼に 醸(か)める
      大御酒 うまらに 聞こし持ち食(を)せ まろが父(ち)

   橋本氏の読みと解説
古事記に同じ

  ④次に、日本書紀第三十九番の「枯野舟の廃材で琴を作った時の詩」に入った。
・日本書紀第三十九番
従来読み:枯野を 塩に焼き 其(し)が余り 琴に作り 掻き弾くや
    由良の門(と)の 門中(となか)の海石(いくり)に
    触れ立つ なづの木の さやさや

橋本氏の解釈
解釈:枯野舟の船材で 鹽に焼きをしたのですが その船材が余りましたので
   琴を作ってみました それを弾いてみると 由良の港の 港の中の岩礁に
   揺れて生えている ナヅの木(漬の木・海辺に生えている植物)が
   (その音で)サヤサヤとすがすがしく揺れました。
(古事記第七十五番も同じ)

⑤次に古事記の「ススコリが醸したお酒の歌」に入った。
 ・古事記第五十番
  従来読み:須須許理(すすこり)が 醸(か)みし御酒に 我酔(え)ひにけり
       事無酒(ことなぐし) 笑酒(えぐし)に 我酔ひにけり

橋本氏の解説
解説:コトナグシは事無酒で災いを払うお酒。エグシは笑酒で楽しくなるお酒 
解釈:ススコリが醸したお酒に 私は酔ってしまいましたよ 災いを払うお酒 
   楽しくなるお酒に 私は酔ってしまいました 
 
⑥本日の最後、日本書紀第三十八番の「応神帝が吉備の兄媛を恋うる歌」に入った。この 
 二つの島をどこを起点に見るかの議論もあった。 
・従来読み:淡路島 いや二並び 小豆嶋 いや二並び 寄ろしき嶋嶋 
      誰(だ)かた去れ放(あら)ちし 吉備なる妹(いも)を 
      相見(あいみ)つるもの  
橋本氏の読みと解説、解釈 
読み:淡路島 いや二並び 小豆島 いや二並び 宜しき島々 
   汝方(なかた)戯れ粗(あら)ちし 吉備なる妹(いも)を 
   相見(あひみ)つるもの 
解説:ナカタサレアラチシはナカタ(汝、方)で貴女、サレ(戯(サ)る、の連用形) 
   アラチ(粗し、の転) シ(強意の副詞)で、「天真爛漫」ですね 
解釈:淡路島よ やア 二つ並んでいるね 小豆嶋と やア 二つ並んで 
   良い(関係の)嶋々ですね (羨ましいな) 
   貴女は天真爛漫な人でしたね 吉備生まれの愛する人とは 契りを交わしたのにね 
 
 
2.次回の予定 
 次は古事記の第五十一番から研究する。 
11月11日(土) 13:00~15:00 場所 人形町区民館 
以上